これも比較的最近の特許です。
「乾燥ネギの製造方法」日清食品ホールディングス株式会社-2017-135987
インスタントラーメンなんかによく入っている乾燥ネギの改善を図っているんですね。マインドマップ化しました。
この特許の要点は以下の通りです。
1.刻んだネギをデキストリン水溶液に浸ける
2.乾燥させる
3.アリルイソチオシアネートを添加する
この特許技術で、乾燥工程における細胞組織の酸化反応等による乾燥臭(土や金属臭等)を抑制できるということです。
この特許で使われているものの理由や技術、原理について考えてみました。現時点での理解と超ざっくりな説明、憶測も多分に混じっていますのであらかじめご容赦くださいm(__)m
デキストリンとは?
Wikipediaを引用します。
デキストリン (dextrin) は、デンプンまたはグリコーゲンの加水分解で得られる低分子量の炭水化物の総称である。
これだけじゃよく分かりませんね。主にトウモロコシから作られるでんぷんの一種です。よく「難消化性デキストリン」という名前を聴きますが、それは消化吸収がゆっくりでその性質から健康効果が期待されているものですが、単なる「デキストリン」は逆に消化吸収が早いです。
デキストリン水溶液の役割は?
デキストリンとは、トウモロコシや小麦から製造される糖類
「食品乾燥における糖質の安定化効果と乾燥挙動への影響」という論文では、「浸透圧脱水と種々の乾燥の組み合わせによる野菜の脱水は高品質な製品が得られることで注目されている。」とあり、ジャガイモでの実験はスクロース、トレハロース、マルトデキストリンの水溶液が使われています。糖の水溶液に浸けてから乾燥させるという製法そのものは以前からあったようです。
浸透圧脱水
デキストリン水溶液に浸けるとネギの水分が浸透圧で水溶液側に出てくるということですね。前述論文の実験結果によると、糖の種類により乾燥速度に違いがあります。この特許でも比較例でグルコース、トレハロース、ラクトースの実験結果がありますが、ネギにはデキストリンが向いていたんですね。
酸化と還元?
乾燥臭の原因に「酸化反応」とあるので、水溶液があると酸素に触れないし、乾燥時もデキストリン成分がネギをコーティングして酸化しづらくするのだろうかと考えました。乾燥時のメカニズムがよく分からないので、これ以上掘り下げるのを止めました(酸化・還元も勉強しなくては!)
シクロデキストリンの性質-包接と徐放
この特許はサイクロデキストリン(シクロデキストリン)でも同様の効果があると言っています。シクロデキストリンはデキストリンが環状になったものです。調べてみると面白い性質を持っているので、パワーポイントで図を描いてみました。
シクロデキストリンは底の無いバケツのような形をしていて、内側は親油性、外側は親水性を持っています。
シクロデキストリンは内部に分子を取り込むことができます。このとき、シクロデキストリン側をホスト、分子がゲストと呼びます。そしてこの現象を包接と言います。一方、分子はいつまでもとどまらないので、シクロデキストリンから徐々に出ていきます。これを徐放と言います。
この性質を利用してネギが持っている乾燥臭のもとになる物質の分子を取り込んで臭いを抑制したり、辛味を補うアリルイソチオシアネートを徐々に揮発させていくということなのでしょうか。シクロデキストリンの性質の応用として、例えば練りワサビ、入浴剤・制汗消臭剤などがあります。結構身近なものに使われています。シクロデキストリン学会があるぐらいですから、奥が深そうな物質です。
TRIZの発明原則
最近のビデオでTRIZの話題が出ていました。どの原則に当てはまるのかを理解できるのは相当な量の特許明細書を読まないとできないと言われていました。まだ読んでいる数が少ないですが、推測しながら慣れていきたいと思います。前回の記事は発明原理2の分離ではないかと思っています。この特許だと発明原理35パラメーターの変更(もしくは物体の物理的/化学的状態の変移)か、10の先取り作用(もしくは、アクションの先取り)ではないかなあと思うのですが。